貴婦人と一角獣 クリュニー国立博物館展 国立国際美術館

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国立国際美術館で行われた貴婦人と一角獣展。
ここ最近の同美術館をはじめとする他の企画展の中でも珍しいスタイルだな、という印象を受けた。
というのも美術館というよりは博物館に近い内容の展示だと感じた。

まず、展示物の数が他に比べ圧倒的に少ない。
そしてほとんどすべての作品にキャプションがつけられている。
それらはすべて今回の貴婦人と一角獣を補足し、理解を促す内容のものだ。cluny2

展示構成は以下

  1. イメージ映像
  2. 貴婦人と一角獣
  3. 貴婦人と一角獣比較映像
  4. 貴婦人と一角獣(詳細)
  5. 同時代のファッション
  6. 同時代のタペスリー
  7. 盾形紋章について

最初に挨拶があり、今回の展示を創造させるイメージ映像が流れる。
今回の貴婦人と一角獣のタペスリーは6枚で構成されているため、
それぞれの一部分をトリミングしたスライドショーと、
それに合わせそれぞれの場面を想起させる短い言葉が流れていた。

全体的にかなり照明は暗く、その部屋の中に光を当てられた大きなタピスリーは浮かんでいる。
タピスリーはどれも大きく、一体『織り』という技法で、ここまでのことができたのかと感嘆せざるを得ないほど、非常に細部まで作り込まれている。
これをもし自分が作ることになるとしたら、あるいはこの細かさの絵をA4サイズでもかけるだろうか、と思うほど、作成には気が遠くなる作業が想像された。

フランス国立クリュニー中世美術館の至宝《貴婦人と一角獣》は、西暦1500年頃の制作とされる6面の連作タピスリーです。19世紀の作家プロスペル・メリメやジョルジュ・サンドが言及したことで、一躍有名になりました。
千花文様(ミルフルール)が目にも鮮やかな大作のうち5面は、「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」と人間の五感を表わしていますが、残る1面「我が唯一の望み」が何を意味するかについては、”愛””知性””結婚”など諸説あり、
いまだ謎に包まれています。
本作がフランス国外に貸し出されたのは過去にただ一度だけ、1974年のことで、アメリカのメトロポリタン美術館でした。 本展は、この中世ヨーロッパ美術の最高傑作の誉れ高い《貴婦人と一角獣》連作の6面すべてを日本で初めて公開するもので、タピスリーに描かれた貴婦人や動植物などのモティーフを、関連する彫刻、装身具、ステンドグラスなどで読みといていきます。

クリュニー中世美術館の珠玉のコレクションから厳選された約40点を通して、中世ヨーロッパに花開いた華麗で典雅な美の世界を紹介します。ぜひご覧ください。

上記が今回のあいさつ文である。
つまり、貴重な展示で、今後もおそらく見る機会はそう容易には巡ってこないだろうことが推測された。

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貴婦人と一角獣

上記にもあるとおり、これは6枚のタペスリーの大作からなっている。
それぞれは「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」を表し、1枚だけ詳細はわかってはいない。
いないけれど、おそらくそれは第6感、心を表しているのではないかということになっている。

貴婦人が中央にいて、その両端に獅子と一角獣がいる。
それらは赤字に紺色で斜めに切り替えしがはいり、そこに月が三つ並んだ紋章の旗や盾を持っている。
旗や盾はそのタピスリーの依頼人の家のもの(王族?)の紋章のようである。

全体にたくさんの植物、動物があしらわれ、3m以上の大作にもかかわらず、すさまじい細かさの織りでもって
絵画的表現を可能にしている。
描かれた動物たちや、中央に描かれた貴婦人の様子が5感、第6感を示している。

動物は当時そこにいなかったものも描かれており(猿、チーターなど)
おそらく見世物か何かで回ってきたものを描かれたのだと思われる。
中でも猿は題材に関して大きな役割を果たしているものが多く、
多く描かれたウサギは多産の象徴として有難がられたということだ。

全面に植物を描く千花文様(ミルフルール)の装飾的な様式の中に、
細かく細部まで写実的に表された植物。
植物に関しては非常に細かく描かれ、それぞれの種類が殆どすべて特定できるほどだという。
そして前面に散らされた植物の図案は、
また違うタピスリーでも使いまわされた。

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同時代のファッション、タピスリー

同時代のファッションや彫刻、またタピスリーも展示されていた。
タピスリーは有名な作品を簡略化した『受胎告知』、紺地に様々な恋愛模様を表した『恋愛の情景』
3つの情景を1枚に表した『放蕩息子』、そして算術を教えている図の『算術』の4点のみ。
そのほかは資料的な意味合いの強い当時のファッション、ジュエリーなどが展示されていた。

因みに16世紀はルネッサンス盛期でダ・ヴィンチなどが活躍した時代である。

盾形紋章

今回多く登場する旗などに見られる紋章の説明と資料があった。
意外と多くのルールがあり、それらをクリアして考えねばならなかった。

また、そのルールと貴婦人と一角獣に見られる紋章の剥離が、
なぞを深める湯押印にもなっているらしい。
(色の隣は色ではなく金属食がこなければならないというルールによるもの)

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まとめ

今回の展示では非常に珍しいものを見ることができたし、
貴婦人と一角獣という作品群は迫力も美しさも申し分のない作品であった。
身に来てよかった。

作者にスポットを当てて掘り下げていく展示は数多くあるが、
1つの作品にスポットを当てるという展示は珍しく、新鮮に感じた。
また、1つを掘り下げ細部までしっかり見せようという気概が感じられた。
作品展というよりは資料の展示という側面が強かったことが印象強い。

しかしながら同時代のほかの美術作品も並列に並べてほしかった。
1500年代というのは漠然とどのような作家が活躍した時代かというのも合わせてみたかった。

とはいえ、興味深い展示であったことに変わりはなく、
きっと、死ぬまでもう見ることができないかもしれない作品を今見ているということが、
作品に夢中にさせた。

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