線と点ー眼鏡のレンズについて

できるだけ掛けたくないのだけれど、コンタクトレンズをつけるのが怖いから、眼鏡をかけている。

眼鏡をかけ始めてもうすぐ10年、
初めてかけた時の感動を忘れない。

それまで、というより今でもそんなに悪いということはない。
裸眼でも充分生活が可能なほどで、家にいる時や、よく見ることが必要でない時は外していることも多い。
そのせいで、すぐなくす。
かけているのか、かけていないのか、わからなくなってくる。
必需品ということでもないから、何かの拍子に外して、それがどこに行ったのか思い出すことのできない場合が多い。

気付くといつも眼鏡を探している。
そうして1年に一本、眼鏡をなくす。

高校の頃、美術系の大学を志した時に、どうしてもデッサンがいるという話になり、美術用の塾(こういうのを研究所というらしい)に通ってデッサンをしてのだけれど、その時に目が悪いのだと気付いた。
質感がわからなかったのだ。
そこがプラスチックか、金属か。
そのことをそこの先生に指摘されて、
『目が悪かったという理由で上達が遅れることがある。眼鏡をかけたら一気に伸びる人もいる』
と言われ、人生初めての眼鏡を買いに行った。18歳、ちょうど今頃の季節だった。

親に車に乗せてもらって眼鏡を買いに行った。眼鏡屋に行って視力を測ってデザインを選んで、調節して、初めての眼鏡を手に入れた。
はじめは長時間掛けることができなかった。眉間に違和感を感じて、慣れるまである程度時間がかかった。さらに、学校でもほとんどかけなかった。何と無く気恥ずかしくて、絵を書くこと以外でかけることをしなかった。

買ってもらった帰りの車の中で、初めて眼鏡をかけた。
新緑の葉の一つ一つが鮮明に見え、遠くの山や、建物までが、くっきりと眼前に浮かび上がる。
感動した、綺麗だと思った。

その眼鏡はそれから2年後にいつの間にやらなくなってしまっていた。
ポケットに入れていたような気がするけれど、どこにも見当たらなかった。

次のものは家具を見に行った時に、その次はお酒飲み過ぎた時、さらにその次は、また、気づくとどこにもなかった。

めまぐるしく変わるので、しっかりした
高価なものは買うことができない。いつも安いものの中から選んで買う。

そうしてせわしなく眼鏡をかけ外しして、ぞんざいな扱い方をするので、いつもレンズが汚れている。

指紋のついたレンズは、メガネをかけてないのと同じように視界を白く曇らせた。